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東京高等裁判所 平成9年(行ケ)236号 判決 1999年3月10日

東京都新宿区西新宿1丁目26番2号

原告

コニカ株式会社

代表者代表取締役

植松富司

訴訟代理人弁護士

保田眞紀子

同弁理士

野田義親

東京都千代田区霞が関3丁目4番3号

被告

特許庁長官 伊佐山建志

指定代理人

水垣親房

木下幹雄

田中弘満

小林和男

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1  当事者の求めた判決

1  原告

特許庁が、平成9年異議第70052号事件について、平成9年8月11日にした実用新案登録異議の申立てについての決定(以下「本件決定」という。)を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

2  被告

主文と同旨

第2  当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

原告は、平成元年7月17日、名称を「フィルム一体型カメラ」とする考案(以下「本件考案」という。)につき、実用新案登録出願をし(実願平1-84201号)、平成8年6月11日に実用新案登録(実用新案登録第2509014号)を受けた。

訴外富士写真フィルム株式会社は、平成9年8月11日、本件考案の実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2について、実用新案登録異議の申立てをした。

特許庁は、同申立てを、平成9年異議第70052号事件として審理したうえ、平成9年8月11日、「実用新案登録第2509014号の請求項1ないし2に係る実用新案登録を取り消す。」との本件決定をし、その謄本は、同年9月1日、原告に送達された。

2(1)  本件考案の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された考案(以下「本件考案1」という。)の要旨

予め未露光のフィルムがフィルム供給室に装填されており、撮影毎にフィルムをフィルム巻取り室内に巻取るフィルム一体型カメラにおいて、物体側より、第1レンズ、第2レンズの2枚のレンズで構成され、第1レンズと第2レンズの間に第1絞りが、第2レンズの像側に第2絞りが配置された撮影光学系と、該撮影光学系の第2絞りの像側に近接して設けられたシャッタとを備え、前記フィルム供給室とフィルム巻取り室の間のフィルム搬送路が湾曲していることを特徴とするフィルム一体型カメラ。

(2)  本件考案の実用新案登録請求の範囲の請求項2に記載された考案(以下「本件考案2」という。)の要旨

前記第1レンズ、第2レンズ、第1絞りを保持する鏡胴の像側の開口部を前記第2の絞りとしたことを特徴とする請求項1記載のフィルム一体型カメラ。

3  本件決定の理由

本件決定は、別紙決定書写し記載のとおり、本件考案が、特開昭63-199351号公報(以下「引用例1」という。)、米国特許第3006248号明細書(以下「引用例2」という。)、特開昭51-124420号公報(以下「引用例3」という。)、特開昭53-112734号公報(以下「引用例4」という。)、「写真工業」40巻8号(昭和57年8月1日発行)98~102頁(以下「引用例5」という。)、筒井俊正他2名編集「応用光学概論」(金原出版株式会社昭和44年2月20日第3版第2回増刷発行)75~76頁(以下「引用例6」という。)及び松居吉哉著「光学技術シリーズ1 レンズ設計法」(共立出版株式会社1972年11月5日初版1刷発行)48~49頁(以下「引用例7」という。)にそれぞれ記載された考案(以下、それぞれ「引用例考案1~7」という。)に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められるから、本件考案1及び2は、実用新案法3条2項の規定に違反して登録されたものであり、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則9条2項によって準用する特許法113条2号に該当し、その実用新案登録を取り消すものとした。

第3  原告主張の取消事由の要点

本件決定の理由中、本件考案1及び2の要旨の認定、引用例1~7の記載事項の認定(決定書4頁20行~5頁7行を除く。)、本件考案1と引用例考案1との一致点の認定(同9頁12、13行を除く。)、相違点(1)及び(2)の認定、相違点(1)についての判断、相違点(2)についての判断の一部(同10頁18行~11頁6行)、本件考案2と引用例考案1との相違点(1)~(3)の認定、相違点(3)についての判断の一部(同11頁20行~12頁1行)は、いずれも認める。

本件決定は、引用例考案1の認定を誤った結果、本件考案1と引用例考案1との一致点を誤認し(取消事由1)、相違点(2)についての判断を誤ったものである(取消事由2)から、違法として取り消されなければならない。

1  引用例考案1の誤認(取消事由1)

本件決定が、引用例考案1のシャッタの位置について「該撮影光学系の第2絞りの像側に近接して設けられたシャッタ35(第2図参照。なお第1実施例~第16実施例におけるDの値において、第1絞りと第2絞りの間隔を表すD値は全て1.0000(mm)であり、この値内にシャッタ35が配置されるものと把握することはできず、シャッタ35は第2絞りの像側に設けられているものと把握するのが妥当である。)とを備え」(決定書4頁20行~5頁7行)ていると認定したことは誤りである。

すなわち、引用例考案1は、レンズ付フィルムユニットにおいて、35ミリロールフィルムを使用して、焦点距離と絞りの値を限定するように、絞りと固定焦点の単玉レンズを設定し、フィルムを露出位置で湾曲させようとするものであって、レンズと絞りとシャッタの位置関係に関する思想は全くない。

例えば、引用例1の第2図には、撮影レンズ4とシャッタ35の記載があり、十分なスペースがあるにもかかわらず、2つの絞りは記載されていない。また、同第4図は、第2図に示されたレンズ付フィルムユニットの撮影光学系であり、撮影レンズ4と第1絞り41と第2絞り42が記載されているにもかかわらず、シャッタは記載されていない。

しかも、引用例1の明細書では、同第2図におけるレンズ及びシャッタの関係が明らかにされておらず、このような図面に基づいて、番号も付されず説明もされていない1個の長方形の図形を、「第1絞り及び第2絞り」の2個の「絞り」と断定することはできないし、当業者が、この図形をもって「2個の絞り」と認識することもないのである。

この点について本件決定は、引用例考案1のシャッタは1.0000mm以上の厚みがあるはずであり、この間隔しかない第1絞りと第2絞りの間にシャッタが入るはずがないと推測するが、引用例考案1の出願(昭和62年2月14日)当時、1.0000mm以下の厚みのシャッタは公知公用であった(甲第12~第14号証)から、この推測は誤りである。

したがって、本件決定は、引用例考案1を誤認しており、この誤認に基づいて、本件考案1と引用例考案1が、「該撮影光学系の第2絞りの像側に近接して設けられたシャッタとを備え」(決定書9頁12~13行)た点で一致すると認定したことも誤りである。

2  相違点(2)の判断誤り(取消事由2)

本件決定が、「刊行物1(注、引用例1)に記載された光学系に代えて刊行物2(注、引用例2)に記載された撮影用レンズを採用した場合、第2レンズの像側に第2絞りを設けることは周知事項及び公知事項に基づき当業者がきわめて容易に想到しえたものと認める。」(決定書11頁7~11行)と判断したことは誤りである。

すなわち、引用例考案2は、絞りの直後にシャッタが配置されている構造であって、このシャッタは、ビトウィン・ザ・レンズシャッタと呼ばれており、他のシャッタに比して、簡単な構造で露光ムラのない高速シャッタを可能とすることが知られている(昭和50年7月20日朝倉書店発行「光学技術ハンドブック」868頁下から10~6行・甲第15号証、昭和54年7月15日写真工業出版社発行「カメラ技術ハンドブック」116頁右欄1~5行・甲第16号証、以下「本件技術文献」という。)。そして、当業者であれば、引用例2に記載されている光学系がビトゥィン・ザ・レンズシャッタであると認識し、そのシャッタをレンズや絞りと切り離して扱い、他の位置に置き換えるなどということは考えない。

この点について本件決定は、前示のとおり、引用例考案1について、レンズ・第1絞り・第2絞り・シャッタと、また、引用例考案2について、第1レンズ・第1絞り・第2レンズと各々認定し、引用例1についてはシャッタの位置を第2絞りの像側に配置したことをことさら重視し、引用例2については一体として把えるべきビトウィン・ザ・レンズシャッタをあえて無視し、引用例1に記載された光学系に代えて引用例2に記載された撮影用レンズを採用した場合に、第1レンズ・第1絞り・第2レンズ・第2絞り・シャッタになるとしているが、これは、本件考案1の進歩性を否定するためにした強引、かつ、不当な認定判断である。

当業者は、本件考案1や引用例考案1及び2のような撮影光学系を設計するうえで、レンズと絞りとシャッタを密接な関連をもった一体のものとして把えており、公知の撮影光学系を基本にしてその一部を捨象し、あるいは抽出して、他の公知の撮影光学系の一部と組み合わせて置き換えるという発想をすることはない。したがって、引用例1と引用例2の光学系の一部ずつを取り出したうえ、シャッタの位置を置き換えることなど、到底当業者が考えることではないのである。

なお、当業者は、撮影光学系の設計に着手する前に、レンズと絞りとシャッタをバラバラに把握することがあるが、性能を考えず、レンズの数、絞りの数、レンズと絞りとシャッタの配置関係を考慮すると、膨大な組合せになるので、当業者であっても、その配置を本件考案1のように決定することは困難であるし、また、レンズ系の後方にシャッタを位置させることは設計上の制約も多く(本件技術文献116頁右欄40~41行)、きわめて容易に想到し得るものではない。

第4  被告の反論の要点

本件決定の認定判断は正当であり、原告主張の取消事由はいずれも理由がない。

1  取消事由1について

引用例考案1は、撮影光学系としてレンズ、シャッタ、絞りを有するレンズ付きフィルムユニットである。そして、引用例1の第2図には、撮影光学系として、符号4で示されるレンズ及び符号35で示されるシャッタとレンズ4とシャッタ35との間に記載された長方形図形とが記載されており、上記レンズ付きフィルムユニットは、絞りを撮影光学系の構成要素として有するものであるから、第2図における長方形図形は、上記絞りに相当するものとして把握される。

一方、引用例1の第4図には、上記レンズ付きフィルムユニットの絞りが、第1絞り41と第2絞り42の2つの絞りを用いているものとして記載されているから、第2図の上記長方形図形は第1絞り41及び第2絞り42の2つの絞りを合わせて単に絞り部として表記したものとして把握されるものである。仮に、第2図の上記長方形図形が、第4図で示された2つの絞りのうちの1つの絞りのみを表記しているとすると、他方の絞りも別途表記すべきであるが、それが示されていないことからも、上記長方形図形は、第4図に示された2つの絞りを合わせて単に絞り部としたものと把握できる。

したがって、引用例1の第2図に示されたレンズ付きフィルムユニットの撮影光学系は、物体側から像側に向けて、レンズ、第1絞りと第2絞りとからなる絞り部、及びシャッタが配置されているものと把握するのが妥当である。

また、引用例1には、第1絞りと第2絞りとの間にシャッタが入ることを示唆する記載は存在しないし、1.0000mmの間隔の第1絞りと第2絞りとの間にあえてシャッタが入るべき理由も存存しない。

そうすると、本件決定が、引用例考案1について、「該撮影光学系の第2絞りの像側に近接して設けられたシャッタとを備え」ると認定(決定書4頁20行~5頁7行)したことに誤りはなく、本件考案1と引用例考案1の一致点の認定(決定書9頁12~13行)にも誤りはない。

2  取消事由2について

引用例考案1は、物体側から像側に向けてレンズ、絞り、シャッタの順に配置されており、引用例考案2は、第1レンズと第2レンズとの間に絞りとシャッタとを設けている。そして、レンズを組み合わせた光学系を考える場合、シャッタは、光束の屈折、回折等の伝搬状態に影響を与えるものではなく、単に光束を遮断するだけのものであるので、通常は切り離して扱われる。

そうすると、引用例考案2は、シャッタを切り離して、第1レンズ、絞り及び第2レンズからなる一群の光学系として把握することができ、この一群の光学系を、引用例考案1のレンズ及び絞りからなる光学系に代えて用いると、物体側から像側に向けて順に、第1レンズ、絞り、第2レンズと配置された一群の光学系の像側に、更にシャッタが配置されたものとなる。この光学系の第2レンズの像側に更に光量調整用等の第2絞りを設けることは、引用例4及び5に記載されるような複数レンズを用いた光学系において、第1絞りの外に必要に応じて第2絞りを設けた周知の構成、引用例7に記載されたレンズとレンズの間に絞りを設け、その像側のレンズの像側にレンズ枠で構成される第2絞りを設けた構成に基づき、当業者がきわめて容易に想到できたものである。

したがって、相違点(2)に関する本件決定の判断(決定書11頁7~11行)に誤りはない。

第5  当裁判所の判断

1  取消事由1(引用例考案1の誤認)について

本件決定の理由中、本件考案1の要旨の認定、引用例1~7の記載事項の認定(決定書4頁20行~5頁7行を除く。)、本件考案1と引用例考案1との一致点の認定(同9頁12~13行を除く。)は、いずれも当事者間に争いがない。

引用例1(甲第1号証)には、「本発明は、撮影レンズやシャッタなどの撮影機能を内蔵したフイルム包装容器(以下、レンズ付きフイルムユニットと称する)に関するものである。」(同号証1頁右下欄4~7行)、「35mm幅すなわち画面サイズが24×36mmのフイルムを予め内蔵したレンズ付きフイルムユニットを大きくすることなく、特に厚みを標準レンズの焦点距離以下に抑え、安価でありながら性能的に充分満足のできる撮影レンズを備えたレンズ付きフイルムユニットを提供することを目的とする。」(同2頁左下欄18行~右下欄4行)、「本発明を用いたレンズ付きフイルムユニットの外観を示す第3図において、ユニット本体1はプラスチックの成形によって作製された本体基部2と、本体基部1の背面側の開口を光密に閉鎖する背板3とからなる。本体基部2には撮影レンズ4、ファインダ窓5、レリーズボタン6が設けられている他、内部にはシャッタ、フィルム巻き上げ機構などの撮影機構を内蔵している。」(同2頁右下欄19行~3頁左上欄7行)、「撮影レンズ4を含む撮影光学系は、第4図に示したように構成され、・・・また撮影レンズ4の背後に配置される第1絞り41、第2絞り42によって光学系全体のF値が設定される。」(同4頁左上欄8~14行)、「第2図は第1図に示したレンズ付きフイルムユニットの要部断面図である。第3図は本発明を用いたレンズ付きフイルムユニットの外観図である。第4図は本発明のレンズ付きフイルムユニットに用いられる撮影レンズ系の概略図である。」(同8頁右上欄14~19行)と記載され、第1~第16実施例において、第1絞りと第2絞りの間隔を表すD値は、全て「1.00(00)」mmと記載されている。

これらの記載及び引用例1の第2~第4図によれば、引用例考案1は、フイルムを予め内蔵したレンズ付きフイルムユニットであり、機構的に安価で簡単な構造の撮影光学系を提供することを目的とし、レンズ、シャッタ、絞りを撮影光学系の基本構成要素とするものと認められるところ、同第2~第4図にはその具体的構成例が示されており、要部断面図である第2図のレンズ付きフィルムユニットには、レンズ4とシャッタ35とこれらの間に記載された長方形図形の3部材が開示されているが、撮影光学系における必須の基本構成要素である絞りの所在は明記されておらず、他にこれに相当する部材も記載されていない。また、撮影レンズ系の概略図である第4図には、レンズ4、第1絞り41及び第2絞りにより絞り値Fが設定されることが開示されており、絞り値に直接関連しないシャッタの図示は省略されているものと認められる。

そうすると、当業者は、引用例1の上記記載及び第2、第4図を総合的に勘案したうえ、撮影光学系の基本構成要素を具体的に開示した第2図において、レンズ及びシャッタの間に位置する上記長方形図形の部材を、撮影光学系における必須の基本構成要素である絞りと認識することは当然であり、これが、引用例考案1の撮影光学系を構成する第1絞り及び第2絞りを技術概念として一体的に表記したものと把握できるものと認められる。

原告は、引用例1の第2図においてレンズ及びシャッタの関係が明らかにされておらず、このような図面に基づいて、番号も付されず説明もされていない1個の長方形の図形を「第1絞り及び第2絞り」の2個の「絞り」と断定することはできないと主張する。

しかし、前示のとおり、撮影光学系の基本構成要素を具体的に開示した要部断面図である第2図には、撮影光学系の基本構成要素として3部材が開示されており、このうちレンズ4とシャッタ35が特定できる以上、説明等が付されていないとしても、当業者が、これらの部材の間に記載された長方形図形を、撮影光学系の必須の基本構成要素である絞りと認識することは、きわめて自然なことといわなければならない。また、引用例考案1が、第1絞り及び第2絞りにより構成されることを特徴とするものであって、撮影レンズ系の概略図である第4図にも、レンズ4、第1絞り41及び第2絞りが開示されており、すべての実施例において両絞りの間隔が、わずか1.0000mmに設定されている以上、当業者は、この1個の長方形図形が第1絞り及び第2絞りを一体的に表記したものとして把握できることも明らかであるから、原告の上記主張を採用する余地はない。

また、原告は、引用例考案1の出願(昭和62年2月14日)当時、1.0000mm以下の厚みのシャッタは公知公用であった(甲第12~第14号証)から、本件決定がこの間隔の間にシャッタが配置されるものと把握することはできないと推測した(決定書4頁20行~5頁7行)ことは誤りであると主張する。

たしかに、本件決定では、第1絞りと第2絞りの間にシャッタが配置されるものと把握することはできないと認定した根拠は示されていないが、前示のとおり、引用例1の各記載及び第2、第4図を総合的に勘案した当業者は、物体側から像側に向けてレンズ4、第1絞り41と第2絞り42とからなる絞り部、及びシャッタ35が配置されているものと認識するのが自然であり、仮に、引用例考案1の出願当時、1.0000mm以下の厚みのシャッタが公知公用であり、この間隔の間にシャッタを配置することが技術的に可能であったとしても、引用例考案1のように、機構的に安価で簡単な構造の撮影光学系の提供を目的とするレンズ付きフィルムユニットタイプのカメラにおいて、上記のようなわずかな間隔内にシャッタを配置するという複雑高度な構成を採用することは、技術常識上、きわめて異例のことであり、当業者は、その技術的可能性を否定しないとしても、前示のようなより一般的な撮影光学系の基本構成を把握できることが明らかであるから、結果として本件決定の上記認定に誤りはなく、原告の上記主張も到底採用することができない。

そうすると、本件決定が、引用例1には「シャッタ35は第2絞りの像側に設けられているものと把握するのが妥当である。」(決定書5頁5~7行)と認定したことに誤りはなく、これに基づいて、本件考案1と引用例考案1とが「該撮影光学系の第2絞りの像側に近接して設けられたシャッタとを備え」(決定書9頁12~13行)ている点で一致すると認定したことにも誤りがない。

2  取消事由2(相違点(2)の判断誤り)について

本件決定の理由中、本件考案1と引用例考案1とが「撮影光学系における第1絞りと第2絞りのレンズに対する配置が、本件請求項1に係る考案は、第1レンズと第2レンズの間に第1絞りが、第2レンズの像側に第2絞りが配置されているのに対して、刊行物1に記載されたものは、1枚レンズの像側に第1絞り、第2絞りが配置されている点、で相違する」(決定書10頁1~7行)こと(相違点(2))、この相違点(2)の検討において、引用例考案2では「撮影光学系のレンズである第1レンズと第2レンズの間に第1絞りを配置すること」(同10頁18~19行)が開示され、「第1絞りの外に必要に応じて第2絞りを設けることは周知の事項であり(刊行物3~刊行物5の記載参照。)、そして撮影用光学系が複数枚のレンズからなる場合に、像側に最も近いレンズの像側に絞り作用部を設けることは公知(例えば刊行物7における図3.8参照。)である」(同10頁20行~11頁6行)ことは、いずれも当事者間に争いがない。

また、本件考案1と引用例考案1とが「撮影光学系のレンズが、本件請求項1に係る考案は、物体側より、第1レンズ、第2レンズの2枚のレンズからなるのに対して、刊行物1に記載されたものは1枚のレンズからなる点」(決定書9頁17~20行)で相違すること(相違点(1))、この相違点(1)について、「撮影光学系の諸特性を改善するものとして、物体側より、第1レンズ、第2レンズの2枚のレンズからなる撮影光学系を適用した写真カメラは公知(例えば刊行物2の記載参照。)であり、刊行物1に記載された1枚レンズに代えて公知の2枚レンズを採用することは当業者がきわめて容易になしえた」(同10頁10~16行)ことも、当事者間に争いがない。

そうすると、前示認定のとおり、物体側より、レンズ、第1絞り、第2絞りが配置された引用例考案1において、その1枚レンズに代えて公知の2枚レンズを採用するとともに、引用例考案2に開示された、第1レンズと第2レンズの間に第1絞りを配置するという公知の構成を採用して、本件考案の構成を想到することは、前示の第1絞りの外に必要に応じて第2絞りを設けるという周知技術及び複数枚のレンズの像側に最も近いレンズの像側に絞り作用部を設けるという公知技術を考慮するまでもなく、当業者にとってきわめて容易になし得ることといわなければならない。

原告は、引用例考案2が、絞りの直後にシャッタが配置されているビトウィン・ザ・レンズシャッタと呼ばれる構造であるから、当業者であれば、そのシャッタをレンズや絞りと切り離して扱い、他の位置に置き換えるなどということは考えないし、当業者は、本件考案1や引用例考案1及び2のような撮影光学系を設計するうえで、レンズと絞りとシャッタを密接な関連をもった一体のものとして把えており、公知の撮影光学系を基本にしてその一部を捨象し、あるいは抽出して、他の公知の撮影光学系の一部と組み合わせて置き換えるという発想をすることはないと主張する。

この点について、本件技術文献(甲第16号証)116~117頁には、「シャッターの機能とその種類」の項に、シャッタに要求される基本的機能として、正確な露出時間が得られることや光の遮断性、耐久性等が記載されるとともに、カメラの多様化、高性能化等に対応すべき旨が示され、シャッタの種類として、「ビフォア・ザ・レンズシャッターあるいはフロントシャッター」、「ビドウィン・ザ・レンズシャッター」、「ビハインド・ザ・レンズシャッター」等が可能である旨が例示されている。これらの記載から明らかなように、当業者は、撮影光学系を構成するレンズ及び絞りからなるレンズ系と、シャッタ機構とを、別個の技術思想として把握し、関連するレンズ系の光学特性等に留意しながら、必要とする露出時間や開閉構造等を考慮して、上記に示されたようなシャッタ機構を採用してカメラの設計を行うものと認められる。

したがって、当業者は、カメラの設計に当たって、レンズ系とシャッタ機構との組合せが常に一体不可分なものと把握するものでないことが明らかであり、引用例考案2に関しても、シャッタの位置にとらわれることなくレンズ及び絞りの構成を容易に認識することができるものであるから、原告の上記主張を採用する余地はない。

また、原告は、撮影光学系の設計において、性能を考えず、レンズの数、絞りの数、レンズと絞りとシャッタの配置関係を考慮すると、膨大な組合せになるので、当業者であっても、その配置を本件考案1のように決定することは困難であるし、レンズ系の後方にシャッタを位置させることも設計上の制約が多く(本件技術文献116頁右欄40~41行)、きわめて容易に想到し得るものではないと主張する。

しかし、前示のとおり、引用例考案1は、フイルムを予め内蔵したレンズ付きフイルムユニットであって、機構的に安価で簡単な構造の撮影光学系を提供することを技術課題としているから、当業者は、その課題の解決の観点から、引用例考案2に開示されたような他の撮影光学系の適用を考察するのであり、特定の設計思想もなしに単純に膨大な組合せを検討するものではないから、原告の上記主張は明らかに失当である。また、引用例考案1は、物体側よりレンズ、第1絞り、第2絞りからなるレンズ系の後方にシャッタを配置するものであり、これに引用例考案2の構成を組み合わせるとき得られる、第1レンズ、第1絞り、第2レンズ、第2絞りからなるレンズ系の後方にそのままシャッタを配置することが、設計上特に困難になるとも認められないから、この点に関する原告の上記主張も採用することができない。

したがって、本件決定が、相違点(2)について、「刊行物1に記載された光学系に代えて刊行物2に記載された撮影用レンズを採用した場合、第2レンズの像側に第2絞りを設けることは周知事項及び公知事項に基づき当業者がきわめて容易に想到しえたものと認める。」(決定書11頁7~11行)と判断したことに誤りはない。

3  以上のとおり、原告主張の取消事由にはいずれも理由がなく、その他本件決定に取り消すべき瑕疵はない。

よって、原告の本訴請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中康久 裁判官 石原直樹 裁判官 清水節)

平成9年異議第70052号

実用新案登録異議の申立てについての決定

東京都新宿区西新宿1丁目26番2号

実用新案権者 コニカ株式会社

神奈川県南足柄市中沼210番地

実用新案登録異議申立人 富士写真フイルム株式会社

東京都台東区上野3丁目16番3号 上野鈴木ビル7階 梓特許事務所

代理人弁理士 韮澤弘

東京都台東区上野3丁目16番3号 上野鈴木ビル7階 梓特許事務所

代理人弁理士 阿部龍吉

東京都台東区上野3丁目16番3号 上野鈴木ビル7階 梓特許事務所

代理人弁理士 蛭川昌信

東京都台東区上野3丁目16番3号 上野鈴木ビル7階 梓特許事務所

代理人弁理士 白井博樹

東京都台東区上野3丁目16番3号 上野鈴木ビル7階 梓特許事務所

代理人弁理士 内田亘彦

東京都台東区上野3丁目16番3号 上野鈴木ビル7階 梓特許事務所

代理人弁理士 菅井英雄

東京都台東区上野3丁目16番3号 上野鈴木ビル7階 梓特許事務所

代理人弁理士 青木健二

東京都台東区上野3丁目16番3号 上野鈴木ビル7階 梓特許事務所

代理人弁理士 米澤明

実用新案登録第2509014号「フィルム一体型カメラ」の請求項1ないし2に係る実用新案について、次のとおり決定する.

結論

実用新案登録第2509014号の請求項1ないし2に係る実用新案登録を取り消す。

理由

1. 本件登録実用新案

本件登録実用新案第2509014号の請求項1に係る考案及び請求項2に係る考案は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された事項によりそれぞれ特定される次のとおりのものである。

請求項1

「予め未露光のフィルムがフィルム供給室に装填されており、撮影毎にフィルムをフィルム巻取り室内に巻取るフィルム一体型カメラにおいて、

物体側より、第1レンズ、第2レンズの2枚のレンズで構成され、第1レンズと第2レンズの間に第1絞りが、第2レンズの像側に第2絞りが配置された撮影光学系と、該撮影光学系の第2絞りの像側に近接して設けられたシャッタとを備え、

前記フィルム供給室とフィルム巻取り室の間のフィルム搬送路が湾曲していることを特徴とするフィルム一体型カメラ。」(以下請求項1に係る考案という。)、

請求項2

「前記第1レンズ、第2レンズ、第1絞りを保持する鏡胴の像側の開口部を前記第2の絞りとしたことを特徴とする請求項1記載のフィルム一体型カメラ。」(以下請求項2に係る考案という。)

2. 引用刊行物記載の考案

先の取消理由通知においては、

刊行物1;特開昭63-199351号公報、

刊行物2;米国特許第3、006、248号明細書、

刊行物3;特開昭51-124420号公報、

刊行物4;特開昭53-112734号公報、

刊行物5;「写真工業」第40巻第8号(昭和57年8月1日発行)第98~102頁、

刊行物6;筒井俊正他2名編集「応用光学概論」(金原出版(株)昭和44年2月20日第3版第2回増刷発行)第75~76頁、

刊行物7;松居吉哉著「光学技術シリーズ1 レンズ設計法」(共立出版(株)1972年11月5日初版1刷発行)第48~49頁、を引用した。

そして、引用した刊行物1(特開昭63-199351号公報)には、

その公報第2頁右下欄第19行~第4頁右下欄第1行、第4頁右下欄第12行~第7頁左下欄第8行、第7頁右下欄下から第5行~第8頁右上欄第10行、及び第1図~第5図からみて、

予め未露光のフィルム21がフィルム供給室(フィルムロール室11が対応する。)に装填されており、撮影毎にフィルムをフィルム巻取り室(パトローネ室12が対応する。)内に巻取るフィルム一体型カメラ(レンズ付きフィルムユニットが対応する。第1図~第3図参照。)において、

撮影レンズ4は1枚のレンズで構成され、撮影レンズの像側である背後に光学系全体のF値が設定される第1絞り41、第2絞り42が配置された撮影光学系(特に、第4頁上左欄第12~14行、第4図、及び第1実施例~第16実施例における第1絞り、第2絞りから把握できる。)と、

該撮影光学系の第2絞りの像側に近接して設けられたシャッタ35(第2図参照。なお第1実施例~第16実施例におけるDの値において、第1絞りと第2絞りの間隔を表すD値は全て1.0000(mm)であり、この値内にシャッタ35が配置されるものと把握することはできず、シャッタ35は第2絞りの像側に設けられているものと把握するのが妥当である。)とを備え、

前記フィルム供給室とフィルム巻取り室の間のフィルム搬送路(フィルム規制面30が対応する。第1図及び第2図参照。)が湾曲しているフィルム一体型カメラ、が記載されているものと認める。

刊行物2(米国特許第3、006、248号明細書)には、

その明細書第1頁第1欄第51行~第2欄第44行、及び図面からみて、

第1レンズL1、第2レンズL2の2枚のレンズで構成され、第1レンズL1と第2レンズL2の間に絞り3とシャッタ4が配置された撮影光学系と、フィルムガイド7が湾曲していることを示すカメラ用撮影光学系が記載されているものと認める。

刊行物3(特開昭51-124420号公報)には、

その公報第3頁右上欄第13行~第4頁右下欄第14行、及び第1図、第2図からみて、

撮影レンズ(非球形のメニスカス・レンズ要素16が対応する。)は1枚のレンズで構成され、撮影レンズによる像の色収差の補正が最善になる位置に第2絞り(開口絞り18が対応する。)を、撮影レンズと開口絞りとの中間に第1絞り(ビネット絞り20が対応する。)が配置された撮影光学系(第2図参照。)と、

該撮影光学系の第2絞りの像側に近接して設けられたシャッタ24(第1図参照。)とを備えた写真カメラ、が記載されているものと認める。

刊行物4(特開昭53-112734号公報)には、

その公報第1頁右下欄第20行~第2頁右上欄第19行、及び第1図~第4図、第7図からみて、

物体側より、前群発散系L1、前群収斂系L2、後群収斂系L3からなる複数枚のレンズで構成され、前群収斂系L2内に第1絞り(フレア絞りEが対応する。)が、前群収斂系L2と後群収斂系L3の間に第2絞り(開口絞りSが対応する。)が配置された撮影光学系(大口径広角写真用レンズが対応する。)が記載されているものと認める。

刊行物5(「写真工業」第40巻第8号(昭和57年8月1日発行)第98~102頁)には、

物体側より、第1レンズ、第2レンズ、第3レンズ、第4レンズの4枚のレンズ(第9図、第10図参照。)で構成され、或いは、第1レンズ、第2レンズ、第3レンズ、第4レンズ、第5レンズの5枚のレンズ(第11図参照。)で構成され、第1レンズの前に第1絞り〔ダイアフラム絞り(第9図及び第11図参照。)または開口絞り(第10図参照。)が対応する。〕が、第2レンズと第3レンズとの間に第2絞り〔開口絞り(第9図、第11図参照。)またはダイアフラム絞り(第10図参照)が対応する。〕が配置された撮影光学系(デイスクカメラ用レンズが対応する。)が記載されているものと認める。

刊行物6(筒井俊正他2名編集「応用光学概論」(金原出版(株)昭和44年2月20日第3版第2回増刷発行)第75~76頁)には、

その第75頁第4行~5行に「レンズの枠や鏡筒等も絞りの一種と考えてよい。」が、またその第76頁第15行~16行に「絞りにはその外に、直接結像に役立つ光については何らの働きもしないが、鏡筒内部等で反射してくる不用な光を遮るためのものがある。」が記載されているものと認める。

刊行物7(松井吉哉著「光学技術シリーズ1レンズ設計法」(共立出版(株)1972年11月5日初版1刷発行)第48~49頁)には、

その48頁第21行~22行に「光学系に入射する光束の拡がりを制限するものが実際の絞り(Stop)である」が、またその第49頁第2行から4行に「絞りが解放に近い状態における軸外物点の結像の場合には、絞りの前後に存在するレンズ枠も光束を制限する働きをする。」が、さらにその第49頁の図3.8からは、「光学系の複数枚のレンズを保持する鏡胴の像側の開口部が光束を制限して絞り作用をしていること」が、それぞれ記載されているものと認める。

3. 本件請求項1に係る考案と刊行物1に記載されたものとを対比すると、

両者は、

予め未露光のフィルムがフィルム供給室に装填されており、撮影毎にフィルムをフィルム巻取り室内に巻取るフィルム一体型カメラにおいて、レンズと第1絞りと第2絞りとが配置された撮影光学系と、

該撮影光学系の第2絞りの像側に近接して設けられたシャッタとを備え、

前記フィルム供給室とフィルム巻取り室の間のフィルム搬送路が湾曲しているフィルム一体型カメラである点で一致し、

(1)、撮影光学系のレンズが、本件請求項1に係る考案は、物体側より、第1レンズ、第2レンズの2枚のレンズからなるのに対して、刊行物1に記載されたものは1枚のレンズからなる点、

(2)、撮影光学系における第1絞りと第2絞りのレンズに対する配置が、本件請求項1に係る考案は、第1レンズと第2レンズの間に第1絞りが、第2レンズの像側に第2絞りが配置されているのに対して、刊行物1に記載されたものは、1枚レンズの像側に第1絞り、第2絞りが配置されている点、で相違するものと認める。

上記相違点について検討する。

(1)について、

撮影光学系の諸特性を改善するものとして、物体側より、第1レンズ、第2レンズの2枚のレンズからなる撮影光学系を適用した写真カメラは公知(例えば刊行物2の記載参照。)であり、刊行物1に記載された1枚レンズに代えて公知の2枚レンズを採用することは当業者がきわめて容易になしえたものと認める。

(2)について、

撮影光学系のレンズである第1レンズと第2レンズの間に第1絞りを配置することは公知(例えば刊行物2の記載参照。)であり、また、第1絞りの外に必要に応じて第2絞りを設けることは周知の事項であり(刊行物3~刊行物5の記載参照。)、そして撮影用光学系が複数枚のレンズからなる場合に、像側に最も近いレンズの像側に絞り作用部を設けることは公知(例えば刊行物7における図3.8参照。)である。

してみると、刊行物1に記載された光学系に代えて刊行物2に記載された撮影用レンズを採用した場合、第2レンズの像側に第2絞りを設けることは周知事項及び公知事項に基づき当業者がきわめて容易に想到しえたものと認める。

次に、本件請求項2に係る考案と刊行物1に記載されたものとを比較すると、請求項1に係る考案との比較における前記相違点(1)、(2)に加えて、(3)本件請求項2に係る考案は、前記第1レンズ、第2レンズ、第1絞りを保持する鏡胴の像側の開口部を第2絞りとしているのに対して、刊行物1に記載されたものはこのような構成を有していない点で、両者はさらに相違するが、レンズ、絞りを鏡胴(鏡筒)に保持させることは周知の事項であり(例えば刊行物3の第1図参照。)、しかも鏡胴(鏡筒)の開口部が絞り作用を有することも周知の事項(例えば刊行物6、刊行物7に記載された事項参照。)であるから、この相違点に係わる構成は当業者が必要に応じてなしうる設計的事項であるものと認める。

なお、実用新案登録権者は、意見書において、刊行物2に記載されている撮影レンズは、前レンズL1と後レンズL2の間にシャッタを配置することを前提とした撮影レンズであって、仮に刊行物1の撮影レンズに代えて刊行物2の撮影レンズを採用した場合には、当然シャッタの位置が前レンズL1と後レンズL2の間となり、本件請求項1に係る考案のシャッタ位置とは異なるものとなると主張しているが、刊行物2の記載として認定した事項は、撮影レンズとして2枚のレンズからなるものは公知であることを挙げたに止まり、複数レンズからなる撮影レンズにおいて、シャッタの位置を撮影レンズの中に配置するか、或いは撮影レンズの背後に配置するかは適宜に採用されている事項であることは周知(例えば、日本写真学会写真用語委員会編「写真用語辞典」の「レンズシャッター」の項目、第292頁参照 昭和51年6月1日初版発行 株式会社写真工業出版社)であり、2枚のレンズからなる撮影レンズの場合、シャッタの位置がレンズ間に配置されるべきものといえるものではないのでこの主張は採用できない。

4. むすび

以上のとおり、本件請求項1に係る考案及び請求項2に係る考案は、上記刊行物1~7に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められるから、本件請求項1に係る登録実用新案及び請求項2に係る登録実用新案は、実用新案法第3条第2項の規定に違反して登録されたものであり、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項によって準用する特許法第113条第2号に該当する。

よって、結論のとおり決定する。

平成9年8月11日

審判長 特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

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